顎が外れるという現象は医学的には顎関節脱臼と呼ばれ、下顎の関節突起が側頭骨の関節窩から前方へ逸脱し、自力で元の位置に戻らなくなった状態を指します。私たちの顎は、耳の穴のすぐ前方にある顎関節という非常に特殊な関節によって支えられており、回転運動と滑走運動を組み合わせることで、複雑で大きな動きを可能にしています。通常、口を大きく開けたときには下顎頭が関節隆起という盛り上がりを乗り越えますが、周囲の筋肉や靭帯が緩んでいたり、過度な力が加わったりすると、この下顎頭が元に戻れなくなってしまうのです。原因は多岐にわたり、大きなあくびや笑い、歯科治療中の長時間の開口、硬いものを無理に噛もうとした際などの日常的な動作がきっかけとなることが多いです。また、骨の形には個人差があり、関節隆起が低かったり、逆に関節窩が浅かったりする人は構造的に外れやすい傾向にあります。顎が外れると口を閉じることができなくなり、無理に閉じようとすると激しい痛みが生じ、唾液を飲み込むことも困難になります。さらに、顔の形が変形して見えたり、明瞭な発音ができなくなったりするため、患者は強い精神的パニックに陥ることが少なくありません。一度脱臼を経験すると、関節を支える組織が引き伸ばされて緩んでしまうため、習慣的に外れやすくなる「習慣性脱臼」に移行するリスクがあります。特に高齢者や、若年層でも関節の柔軟性が高すぎる人は注意が必要です。顎関節周囲の筋肉の緊張や、ストレスによる食いしばりなども、関節の安定性を損なう要因となります。顎が外れるというトラブルを防ぐためには、自分の顎の限界を知り、無理な動きを強いないことが大切です。もし外れてしまった場合には、パニックにならずに速やかに歯科口腔外科を受診し、専門家による徒手整復を受けることが推奨されます。
顎が外れる原因と顎関節の仕組みについて