それはある日曜日の午後、自宅でリラックスしてテレビを見ていたときのことでした。ふと大きなあくびが出そうになり、いつものように無防備に口を大きく開けた瞬間、耳の横で「ガクッ」という鈍い音が響きました。直後、顎がカチッとロックされたような感覚になり、口を閉じようとしても全く動かなくなってしまったのです。最初は「少し筋を違えただけだろう」と軽く考えていましたが、数秒経っても状況は変わらず、次第に顎の付け根に激痛が走り始めました。鏡を見ると、下顎が前の方に突き出たまま歪んでおり、口は半開きの状態で固定されていました。無理に手で押し戻そうとしましたが、痛みが強まるばかりでビクともしません。言葉を発しようとしても、こもったような声しか出ず、溢れてくる唾液を飲み込むことすら困難な状況に、私は生まれて初めての恐怖を感じました。家族に助けを求め、タクシーで急いで休日診療の歯科口腔外科へ向かいました。車中でも振動が響くたびに痛みが増し、通行人の視線が気になって仕方がありませんでした。病院に到着し、医師に状況を伝えると「顎関節脱臼ですね」と冷静に告げられました。処置室で医師が私の口の中に親指を入れ、下顎を下方へ押し下げながら後方へ戻す「ヒポクラテス法」という整復術を行ってくれました。一瞬、強い圧迫感があった後、顎が「ストン」と元の位置に収まる感覚がありました。その瞬間、嘘のように痛みが消え、口を閉じられるようになったときの安堵感は言葉では言い表せません。医師からは、しばらくは硬いものを避け、大きなあくびをするときは拳を顎の下に当てるようにとアドバイスを受けました。この日以来、私は口を開けるという当たり前の動作に対して非常に慎重になりました。たかが、あくび一つでこれほどの苦痛を味わうとは想像もしていませんでしたが、健康な体のありがたみを痛感した出来事でした。
大きなあくびで顎が外れた私の恐怖体験