1ヶ月ほど前のことですが、朝の洗顔中にふと鏡を見ると、奥歯の溝に沿って細く鋭い黒い線が入っているのを見つけました。痛みも違和感も全くありませんでしたが、歯が黒いのは虫歯じゃないかという不安が頭をよぎり、その日1日は食事中もその歯のことばかりが気になって仕方がありませんでした。ネットで検索すると「痛くない虫歯は進行している証拠」といった恐ろしい情報ばかりが目に飛び込んできて、私は意を決して15年ぶりに歯科医院の予約を取りました。診察室の椅子に座り、先生に「先生、奥歯に黒い穴が空いているみたいなんです」と告げると、先生はマイクロスコープを使って私の歯をじっくりと観察し始めました。レントゲンも1枚撮影しましたが、先生から返ってきた言葉は予想外のものでした。「これは虫歯じゃないですよ。歯の溝の深い部分に、長年飲み続けてきたお茶やコーヒーの成分が沈着しているだけです」という説明に、私は耳を疑いました。先生によれば、私の歯はもともと溝が非常に深く複雑な形状をしており、そこに1ミリにも満たない微細なステインが入り込んでしまったことで、まるで初期の虫歯のように見えていたのだそうです。さらに詳しく聞くと、歯が黒い状態であっても、それが「初期虫歯が再石灰化して活動を止めた状態」である場合、下手に削るよりもそのまま経過観察をする方が、歯の寿命を延ばすためには遥かに有益であるという最新の歯科医学の考え方を教えてもらいました。結局、その日の治療は専用の器具を使った数分間のクリーニングだけで終わり、黒い線は綺麗さっぱりと消えてなくなりました。費用も数千円で済み、12万円もの治療費を覚悟していた私は、拍子抜けすると同時に心から安堵しました。この経験を通じて学んだのは、自分の素人判断で「歯が黒い=虫歯」と決めつけて落ち込む必要はないということです。もしあの時、不安に負けて放置していたら、今でも鏡を見るたびに憂鬱な気分になっていたでしょうし、逆に不必要な削る治療を自分から求めていたかもしれません。3ヶ月に1回、プロの目でチェックしてもらうことの安心感は、何物にも代えがたいものだと痛感しました。今では毎朝の鏡チェックが不安の時間ではなく、健康を確認する習慣に変わっています。もし同じように歯に黒い点や線を見つけて悩んでいる人がいたら、まずは1人で悩まずに、信頼できる歯科医師の診断を受けることを強くお勧めします。