仕事のプレッシャーや人間関係の悩みなど、現代社会を生きる私たちにとってストレスは避けて通れない問題です。頭痛や胃痛、不眠など、ストレスが体に及ぼす影響は様々ですが、実は「舌が白くなる」という現象も、ストレスが引き起こすサインの一つであることをご存知でしょうか。一見すると無関係に思える舌の状態と心の状態には、自律神経を介した深い繋がりが存在するのです。私たちの体は、活動時に優位になる「交感神経」と、リラックス時に優位になる「副交感神経」という二つの自律神経がバランスを取りながら機能しています。しかし、強いストレスにさらされ続けると、交感神経が過剰に優位な状態が続き、このバランスが崩れてしまいます。交感神経が優位になると、体は緊張状態となり、様々な変化が起こります。その一つが、唾液の分泌量の減少です。唾液は、リラックスしている時に働く副交感神経によってサラサラとしたものが多く分泌されますが、緊張状態では交感神経の働きでネバネバした唾液が少量しか分泌されなくなります。口の中が乾き、ネバつく感覚は、まさにこの状態です。唾液には、食べカスや細菌を洗い流す「自浄作用」という大切な役割があります。しかし、ストレスによって唾液の分泌が減ると、この作用が十分に働かなくなり、舌の表面に細菌や汚れが溜まりやすくなります。これが、ストレスを感じると舌苔が厚くなり、舌が白く見えるようになる大きなメカニズムです。さらに、ストレスは免疫力の低下も招きます。免疫力が落ちると、口の中の常在菌のバランスが崩れ、特定の細菌が異常に増殖しやすくなり、舌苔の形成をさらに助長してしまいます。もし、特に食生活を変えたわけでもないのに舌が白くなってきたと感じたら、それは「心が疲れているよ」という体からのSOSかもしれません。舌ブラシでケアすることも大切ですが、それと同時に、自分の心の状態にも目を向けてみましょう。十分な休息をとる、趣味の時間を作る、軽い運動で気分転換するなど、自分なりの方法でストレスを上手に解消することが、結果的に白い舌を改善し、心身の健康を取り戻すための最も有効な処方箋となるのです。
舌の白さとストレスの知られざる深い関係