それは、特に忙しいプロジェクトが一段落した週明けの朝のことでした。歯磨きをしようと鏡に向かった私は、そこに映った自分の姿に思わず息をのみました。私の舌が、普段のピンク色ではなく、まるでうっすらと雪が積もったかのように白くなっていたのです。これまで経験したことのないその光景に、一瞬で血の気が引くのを感じました。何か悪い病気だったらどうしよう。そんな不安が頭の中をぐるぐると駆け巡りました。慌ててスマートフォンで「ベロ、白い」と検索すると、出てくるのは「舌苔」という言葉と、それに混じっていくつかの病気の名前。不安は募るばかりでした。しかし、よくよく読んでみると、舌苔はストレスや疲れ、胃腸の不調で厚くなることが多いと書かれています。思い返せば、この数週間、連日の残業とプレッシャーで心身ともにクタクタ。食事も不規則で、コンビニ弁当で済ませることがほとんどでした。原因はこれかもしれない。そう思い至った私は、パニックになるのをやめて、まずは自分でできるケアから始めてみることにしました。まず取り組んだのは、専用の舌ブラシを使った舌ケアです。これまで歯ブラシでついでにこする程度でしたが、柔らかい専用ブラシで奥から手前に優しく撫でるようにケアすると、驚くほど汚れが取れました。力を入れすぎないのがポイントだと知り、毎朝一回、丁寧に行うことを日課にしました。次に、食生活の見直しです。刺激物や油っこいものを避け、野菜スープやヨーグルトなど、胃腸に優しいものを中心に摂るように心がけました。そして何より、意識的に休息をとるようにしました。夜は早めにベッドに入り、リラックスできる音楽を聴きながら眠りにつきました。そんな生活を始めて三日ほど経った頃、ふと鏡を見ると、あれほど濃かった舌の白さが少し薄らいでいることに気づきました。一週間もすると、舌はほとんど元の健康的なピンク色に戻っていました。この一件以来、私は舌を自分の健康のバロメーターと考えるようになりました。舌が白くなってきたら、それは「少し休んで」という体からのサイン。無理をせず、自分をいたわることの大切さを、白いベロが教えてくれたような気がしています。