ボトックスで表情が消える?不自然さの正体
ボトックス注射で最も懸念されるデメリットの一つが、表情が硬直し、不自然に見えてしまうことです。まるで能面のように感情が読み取れない顔つきになってしまった、という話を聞くと、施術を受けるのが怖くなるのも無理はありません。この「表情が固まる」という現象は、ボトックスの作用機序そのものに起因しています。ボトックスは、神経から筋肉への命令伝達をブロックすることで、筋肉の過剰な収縮を抑える薬です。シワの原因となる表情筋の動きを弱めることで、シワをできにくくし、目立たなくさせるのです。しかし、この作用が過剰に働きすぎると問題が生じます。必要以上に多くの量を注入したり、的確でない場所に注射したりすると、シワを寄せる筋肉だけでなく、笑顔や驚きといった自然な表情を作るために必要な筋肉の動きまで抑制してしまうのです。その結果、笑っているのに目元が笑っていない、口角が上がらない、眉をひそめることができないといった、ちぐはぐで不自然な表情が生まれてしまいます。特に、額や眉間といった上半分のエリアは、ミリ単位の注入位置の違いで眉の形が変わったり、目が重く見えたりと、顔全体の印象を大きく左右するため、極めて繊細な技術が求められます。このデメリットを避けるためには、医師の技術力と美的センスが全てと言っても過言ではありません。患者一人ひとりの筋肉のつき方や動きの癖を見極め、最小限の量で最大限の効果を引き出すことが理想的なのです。安易な施術は、美しさを手に入れるどころか、数ヶ月間、不自然な表情で過ごすという辛い結果を招きかねないことを、心に留めておく必要があります。