いつものように舌の先にできた口内炎。私は「またか」と、さほど気に留めていませんでした。疲れが溜まると決まってできる、私にとっては厄介ながらも見慣れた存在だったからです。市販の塗り薬を使い、刺激物を避けていれば、一週間もすれば自然に治る。今回もそう信じて疑いませんでした。しかし、一週間が過ぎ、十日が経過しても、その口内炎は一向に小さくなる気配がありませんでした。それどころか、中心の白い部分が少し硬くなっているような気さえします。いつもなら鋭くしみるような痛みがあるのに、今回はじんわりとした鈍い痛みが続くのも、何となく気味が悪い感じでした。さらに、よく観察してみると、その口内炎の周りにも、小さな口内炎らしきものが二つ、三つとでき始めていることに気づきました。さすがにこれはおかしい。ただの口内炎ではないかもしれないという不安が、私の心をよぎりました。インターネットで「治らない口内炎」と検索すると、様々な病気の可能性が示唆されており、私の不安はさらに増幅されました。もしかしたら、何か深刻な病気の前触れなのではないか。そう思うと、いてもたってもいられなくなり、私は意を決して近所の耳鼻咽喉科の門を叩きました。診察室で医師にこれまでの経緯を話すと、先生はライトを当てて私の舌をじっくりと観察しました。その数分間は、まるで判決を待つ被告人のような心境でした。幸い、診察の結果は「少し治りが悪いタイプのアフタ性口内炎でしょう」というもので、悪性の所見は見られないとのこと。処方されたステロイド軟膏を塗ることで、あれほど頑固だった口内炎は数日で劇的に改善していきました。この経験を通じて私が学んだのは、自己判断の危うさです。いつものことだと軽視せず、少しでも「おかしいな」と感じる点があれば、専門家の意見を求めるべきなのだと痛感しました。例えば、二週間以上治らない、大きさがどんどん拡大する、しこりのように硬い、複数箇所に同時に多発する、出血を伴う、といった症状は、病院を受診するべきサインです。私の場合は大事に至りませんでしたが、早期発見が重要な病気が隠れている可能性もゼロではありません。舌の口内炎は身近な症状ですが、だからこそ、その変化には注意深くありたいものです。
ただの口内炎じゃない?病院受診を考えた体験