舌にできたできものは痛みがあればすぐに気づき、気になりますが、もし痛みが全くなかったらどうでしょうか。「痛くないなら大丈夫だろう」と、つい放置してしまいがちです。しかし、その判断は非常に危険な場合があります。痛みがないからといって、それが安全なできものであるとは限らないのです。痛みがない舌のできものとして考えられるものに、「乳頭腫」や「線維腫」といった良性の腫瘍があります。乳頭腫は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因でできる、カリフラワーのような形をした白っぽいイボです。線維腫は、歯が当たるなどの慢性的な刺激によって粘膜が硬くなったもので、ドーム状に盛り上がります。これらは良性であり、すぐに命に関わるものではありませんが、自然に消えることはなく、大きくなると食事や会話の邪魔になるため、切除するのが一般的です。また、舌の下側にできやすい、青っぽく透き通った袋状のできものは「ガマ腫」かもしれません。これは唾液腺の出口が詰まって唾液が溜まったもので、これも痛みを伴わないことが多いですが、大きくなると発音などに影響が出ます。そして、最も注意しなければならないのが「舌がん」の初期段階です。実は、舌がんの初期は、痛みや出血といった自覚症状がほとんどないケースが多いのです。痛みがない硬いしこりや、こすっても取れない白い膜(白板症)として始まり、静かに進行していきます。痛みを感じるようになった時には、すでにある程度進行してしまっていることも少なくありません。つまり、「痛みがない」ということは、決して安心材料にはならないのです。むしろ、痛みがないまま2週間以上存在し続けるできものの方が、注意深く観察する必要があります。舌に痛みのないできものを見つけたら、まずはその大きさや形、硬さをセルフチェックし、少しでも変化があるようなら、必ず口腔外科や耳鼻咽喉科を受診してください。