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治らないベロのできものに悩んだ私
あれは、大きなプロジェクトを抱えて、連日深夜まで残業をしていた頃のことでした。いつものように舌の先に、小さな白い口内炎が一つできました。「ああ、またか。疲れているんだな」と、いつものことだと軽く考えていました。市販の軟膏を塗り、ビタミン剤を飲んでいれば、そのうち治るだろうと。しかし、今回はいつもと様子が違いました。一週間たっても、二週間たっても、その小さなできものは消えるどころか、少しずつ形を変え、じわじわと大きくなっているような気がしたのです。痛みはそれほど強くないものの、常に舌先に異物感があり、食事や会話のたびに気になって仕方がありません。鏡で見るたびに、その存在が私の心を重くしました。インターネットで「舌 できもの 治らない」と検索すると、出てくるのは「舌がん」の文字ばかり。その特徴を読めば読むほど、自分の症状と重なるような気がして、言いようのない恐怖に襲われました。それでも、「ただの口内炎が長引いているだけだ」と自分に言い聞かせ、病院に行くことから逃げていました。しかし、ある日、同僚から「最近、顔色が悪いよ。何かあった?」と心配され、私はついに観念しました。このまま不安を抱え続けるのはもう限界だ、と。震える手で近所の口腔外科に電話をかけ、診察の予約を取りました。診察当日、私は緊張でガチガチになりながら、医師にこれまでの経緯を話しました。先生は私の舌を丁寧に診察し、そしてこう言いました。「これは、歯が当たってできた慢性的な潰瘍ですね。癌の所見は見られませんよ」。その言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜け、涙が出そうになったのを覚えています。私の場合は、疲れで食いしばる癖がつき、下の前歯の尖った部分が常に舌先に当たっていたことが原因でした。歯の角を少し丸めてもらい、軟膏を処方されて、あれほどしつこかったできものは一週間ほどで綺麗に治りました。この経験を通して、私は自己判断の恐ろしさと、専門家の診断を受けることの大切さを痛感しました。もし同じように悩んでいる方がいたら、どうか一人で抱え込まず、勇気を出して病院へ行ってほしいと思います。